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Streetcar Named Ambition――『甲鉄城のカバネリ 序章』

 しばらくアニメを観ていると、「好きなアニメ」の基準というものが、ある程度客観的と信じている次元でも、完全に主観的な次元でもできてくるはずだ。僕のなかにある基準も、自分なりに色々あるつもりだが、その中でも「観ていてワクワクする」、「野心的」というのは、とりわけ重要な要素であると、最近頓に感じる。まあこういう話は結局、近頃はそんな作品がなかなかないという月並みな嘆息に落ち着くのであるが、それはわきに置いておこう。『甲鉄城のカバネリ』がその基準にしっかり合致していたという話の方がはるかに重要だ。

 

 『序章』と銘打ってはいるが、『UN-GO』の『因果論』のようなエピソードゼロ的なものではなく、ふつうに第1話から第3話までを繋げて上映したものである。大画面で一気に観ることができるのが売りだったとみるべきか。『カバネリ』のストーリーが独創性に富むものかといえば、残念ながらそうではない。初期のPVの頃から言われていたように、直近の作品、というより荒木哲郎監督周辺の作品のいくつかから要素を引っ張ってきたという印象は否めない。「駅」に潜んでカバネの恐怖をしのぐという設定は『進撃の巨人』、スチームパンク&ゾンビは『屍者の帝国』(これはスタジオが一緒というだけだが)、単純にゾンビパニックなら『HIGHSCHOOL OF THE DEAD』と、パッと思いつくものでも結構あげられる。全体的な「和」の雰囲気はやはり、『もののけ姫』を意識しているのかもしれない(キャッチが「生きろ」というのは言い逃れできない気がする)。

 

 しかしこのアニメはそうした欠点を補って余りあるほどに躍動感にあふれている。画面せましと動き回るヒロインの無名の大立ち回り(すっごくエロい)は目を奪われる。監督の言を借りれば「負け犬リベンジ」を目指す主人公生駒の、泥臭いながらも爽やかな活躍には自然と応援させられている。ゾンビものというフォーマットや、疾走する甲鉄城という舞台を最大限生かした緊迫感あふれる展開が単調さを許さない。カバネと人をめぐるそれぞれの思惑が随所に差し挟まれることで、活劇一辺倒になる危険をうまく避けることも忘れていない。どの部分を観ても、どれか一つの要素だけで無難に物語を組み立てるかという適当な姿勢はなく、どうすればこの盛りだくさんの「電車」を走らせていけるか、意識は常にそこに向いている。

 

 荒木監督の作品は『ギルティクラウン』といい、個人的には素直に褒められないものが多いのだが、やはり今ノッてる監督の一人であることは間違いないのだなと、『カバネリ』を観ていて感じずにはいられない。何か面白いことをしてやろう、もう一つ何かを上乗せしてやろう、そうした熱量が画面全体からあふれ出てくる。アニメの魅力とは結局こういうところにあるのではないだろうか。世界観や展開からして、明らかに2クールぐらい使いそうでありながら1クールアニメであること、落としどころ、たたみ方が見えないところなど、不安も山ほどある。それでもこの野心という名の電車がどこまで行くのか、本放送を楽しみにしていたい。