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『アイカツ!』3rdシーズン8選

 『アイカツ!』3rdシーズンが終了した。星宮いちごから大空あかりへの主人公交代という大きな節目を迎え、様々な新たな展開を見せた3期から、「アイカツ8」にひっかけて8話を選んでみることにした。

 

・放送時盛り上がったものより、ストーリーを練っている話を基本的には選んだ。

・3期の重要なテーマや空気感がある程度伝わればと思うが、必ずしも本筋に重要な話を選んでいるわけではない。

・多少キャラクターによる偏りがないでもない。

 

 

・108話「想いはリンゴにこめて」

脚本:平見瞠 演出:佐藤照雄 絵コンテ:佐藤照雄 作画監督:松岡謙治、前澤弘美

 プレミアムドレスをデザイナーにもらいに行く「プレミアムドレス回」(以下PD回)はシリーズを通して出来が良い。一本目もスミレのPD回から選んだ。125話という区切りまで、3期前半は「バトンタッチ」をテーマとし、いちごたち先輩の足跡をなぞりながらあかりたちが自分の道を見つけるという展開が多い。この話も藤堂ユリカのPD回である第20話「ヴァンパイア・スキャンダル」を踏まえて、構成されている。

 108話はひとまず新たな「LoLi GoThiC」の担い手として氷上スミレが一歩踏み出すストーリーである。プレミアムドレスを手にすることの責任とそれに伴う覚悟をユリカから厳しく諭され、スミレはユリカとはまた違ったアイドルとして自分を定めていく。そんなスミレの姿の隣には、かつてのユリカ同様、一所懸命支えてくれる仲間が映し出されている。

 先ほど20話を踏まえていると言ったが、それはつまり、このエピソードがスミレの一歩であると同時に、ユリカの成長の物語でもあるということだ。20話でのユリカは自分のアイカツを見失いかけるも、仲間の力を借りてプレミアムドレスを手にし、決意を新たにした。それから何年か経ち、弱い自分を変えたいと願った駆け出しのユリカは、後輩を導きドレスを譲る先輩にまで成長した。

 先輩と後輩のエピソードを重ね合わせる3期のいくつかのストーリーのなかでも、108話は両者の成長が最も上手く表現され、またかみ合っている。スミレは、今は敵わなくともいつかきっと追いつきたい存在としてユリカに憧れ、アイドルとして一歩前へ進む。

 

・115話「ほっこり☆和正月」

脚本:高橋ナツコ 演出:山地光人 絵コンテ:近藤信宏 作画監督:赤尾良太郎、辻早智子、石川恵理

 「家族」という3期の大事な要素が色濃いエピソードから一本。1期や2期で、家族の設定が一定以上作り込まれていたのはいちご他数名なのに対し、3期の場合、あかりの、スミレ、ひなき、珠璃と皆、家族構成がはっきりしていて、各話での大きな位置を占めることも多い。強烈なアイドルたちの個性で話を進めた1、2期だったが、3期はヒロインと家族の絆を丁寧に描き、その中でアイドルとしての彼女たちを映し出す造りになっているのだろう。

 この話自体は本筋にそこまで関わるものではないのだが、正月という放送時期に合わせた出来事を盛り込む長期アニメらしい手法を用いたあかりの家族描写の丁寧さが光る。あかりと父親の微笑ましいやり取りで話を引っ張り、それを招待された珠璃の目線を通すことであかりの家族の在り方を提示しつつ、なおかつそこにあかり自身の在り方の源を覗かせており、重層的な脚本になっている。星宮いちごの家族はある意味全員が超人みたいなところがあったが、あかりの家族は等身大の家族像を提示していて、そこも3期を象徴しているように思う。あかり&珠璃というあまりない組み合わせを成立させたのも注目に値する。

 そして何よりあかりちゃんが色んな表情をして可愛いらしい。娘を気にかけつつ、ちょっと煙たがられる父親も観ていてほっこりする。全体的にこそばゆい台詞が多く、ちょっとふわふわした空気感があるものの、何気ない温かさを大切にした名エピソードである。世代間のバトンやアイドルとしての姿勢をテーマとしなくても、アイカツのキャラは輝くことができる。この話はそれを証明している。

 

・117話「歌声はスミレ色」

脚本:山田由香 演出:馬引圭 絵コンテ:佐山聖子 作画監督:宮谷里沙、小川エリ、門智昭

 変な言い方だが、大人がカッコいいエピソードである。CM出演か歌手活動かという選択を迫られ、最終的に歌手への道を選んだスミレ。彼女がシャンプーの宣伝担当の水谷郁子に謝罪に行ったとき、付き添ったジョニー別府はスーツを決め、深々と頭を下げた。不覚にも感動してしまった。普段あまり意識されないものの、アイドル達を教え導く「教育者」であるジョニー。彼女たちが決めた道を陰ながら支える彼の姿は最高にカッコいいのだ。出演を断られながらもスミレの夢を応援した女性もやはりカッコいい。アイカツはアイドルたちの物語だが、脇役の大人たちもまた別の意味でカッコよく(もしかしたら同じ意味で)、アイカツを下から支える存在である。

 そして勿論この話の主人公は氷上スミレである。自分の得意なことを見つけたあかりやひなきの姿に焦り、「自分にできること」と「自分のやりたいこと」の狭間で悩みながら答えを見つけていくスミレを軸に、彼女を懸命に支えようとするあかりとの友情、妹を信じる姉のあずさとの絆が重なり合い、丁寧なドラマに仕上がっている。オーディション合格を決めた後、まっさきにあかりに抱き付くスミレや、じっと見守ると言いつつ結果を心配していたあずさの姿がまた感動を呼ぶ。

 この話では、「自分のアイカツは自分で決めねばならない」というセルフプロデュースも織姫学園長によって改めて強調される。自分の進む道に誤魔化しは許されないというアイカツらしい自分に厳しい姿勢を、スミレの分岐点となるエピソードに上手く組み込んでいる。117話でのスミレは、学園長やジョニー、あかりやあずさと、多くの者に見守られている。彼らは皆真摯でかっこよく、自信を持って一歩踏み出したスミレもまた最高にかっこいいのだ。

 

・122話「ヴァンパイアミステリー」

脚本:平見瞠・加藤陽一 演出:小坂春女 絵コンテ:カトキハジメ 作画監督:岡田洋奈・宮谷里沙

 試みが面白く、観ていて楽しいという点から一つ選んだ。「なにやってるんだ」という荒唐無稽なエピソードもアイカツの面白さの一つである。3期は比較的そうしたものは少ないが、122話はその系譜に属するものだろう。ヴァンパイアハンターものというユリカというキャラをフルに活用したドラマ仕立てで、「いちご」世代のキャラもほとんど登場させている(何気に美月が再登場)。なにより、あかりたち4人の配役が絶妙で、作品内二次創作という枠でそれぞれのキャラを可能な限り広げている。スミレは、ヴァンパイアのような妖しい方向にポテンシャルがあるようで、その後も占い師やら怖い話の語り部やら、ここに端を発するキャラ発展を遂げた。

 劇中劇のような形を取りながら、かなり本気で劇を作りこんでいるのが注目ポイント。ハンター役の珠璃もヴァンパイアのスミレも、本当にアイカツなのかという別の意味でシリアスな表情で新鮮である。伏線も結構細かくて、ラストシーンのためにドラマを眺めるスミレはあまり口を開かず、口の中が見えないようになっている。そこから後半の怒涛の茶番劇がなんとも言えず微笑ましい。

 今までもこうしたストーリー仕立てを持ち込む話はいくつかあったものの、基本的にオーディションという枠組みをとっていた。しかし、この話や140話「アイカツレストラン」は放送の仮テープや劇の本番とそれを眺める観客、という形をとっている。これからの可能性を感じさせる新たな試みといえるだろう。

 

・124話「クイーンの花」

脚本:加藤陽一 演出:藤井康晶 絵コンテ:川口敬一郎 作画監督:高橋晃

 アイカツのキャラの魅力は「かわいさ」ではなく、「かっこよさ」だといつも思っている。124話では北大路さくらというキャラクターが圧倒的なまでにかっこいい。登場時から高いポテンシャルを持ったキャラでありつつ、74話「桜色メモリーズ」など成長していくキャラとして描かれたさくらの集大成ともいえるエピソードだ。

 スターライトクイーンカップを舞台とし、クイーンを目指す者として強い自覚と決意を持つさくらと、その姿を見ることで己の至らなさを悟るあかりたち、そして彼女らを見守る現クイーンのおとめ、三者三様のかっこよさがある。高みを目指す者の在り方という神崎美月以来の厳しいテーマではあるが、こういうところから眼を逸らさないのがアイカツの良いところである。

 また「私はいつも何かになりたかった」と話し、「なりたい」という願望を「なりたい」という決意に成長させていったさくらは、星宮いちごへの憧れを125話で目標へと成長させるあかりとパラレルになっており、区切りとなる125話への伏線としても機能している。

 いちごたちが皆高校生になったなか一人だけ中学生として3期にも登場し、先輩と後輩の狭間にいたさくら。彼女もまた一人のアイドルとして高みを目指し、頼れる先輩としてしっかりと道を示した。

 

・125話「あこがれの向こう側」

脚本:加藤陽一 演出:南川達馬 絵コンテ:木村隆一 作画監督:酒井香澄、岡野幸男

 1つぐらいはどうしても入れざるを得ない話というのがあり、125話がそれである。紛うことなき3期の転換点となる最重要エピソードであり、出来栄えも文句なしのものだ。内容については以前も書いたので言うまでもないので、ここでは区切りの話としての在り方について書きたい。

 アイカツにおける区切りの話といえば、いちごがアメリカ留学を決める50話やあかりに主人公が切り替わる102話などが思い浮かぶ。そういうエピソードと比べたとき、125話で起こる出来事は実はそれほど大きくない。ソレイユの全国ツアーや、ソレイユを続けていくという目標が語られることは、いちごの留学や主人公交代に比して、それほど劇的とは言えないだろう。しかしそれでも125話の印象が他より劣ると思う人は恐らくいない。それは、ソレイユという先輩を見て、憧れでしかなかった自分のアイカツに真の目標を見つけた大空あかりの決意がやはり「劇的」だからだ。これからもユニットを続けたいというソレイユの目標も、スターライトクイーンを目指すというあかりの決意も、これまでアイカツに起こった出来事に比べればとても穏やかなものだ。この「穏やかさ」を丹念に追うことで感動を呼び起こす。

 天性の才能を持った星宮いちごと違い、3期の主人公大空あかりはこつこつ頑張るヒロインである。そんなあかりの性格に象徴的な3期の雰囲気が、125話にも確かに息づいている。

 

・128話「夢のショータイム」

脚本:山田由香 演出:のがみかずお 絵コンテ:戸部敦夫 作画監督:岡田洋奈・野上しんや・南雲紋

 プレミアムドレス回からもう一つ。トリッキーな構成とそれを可能にした脚本の冴えが光るエピソードである。普通、PD回はアイドルがデザイナーに会いに行き、困難を乗り越えてプレミアムドレスを掴むという構成をとる。しかし、この黒沢凛のPD回ではあっさりジョニーの元パートナー・サニーからドレスは手に入り、ドレス獲得という目標が中盤で達成されてしまう。このままでは拍子抜けなPD回なのだが、ここからが128話を傑作たらしめている部分である。

 自分がステージに立つことでサニー&ジョニーの夢が叶い、コンビが復活すると思っていた凛は、彼女がステージに立ってもコンビが復活しないとわかり悩む。そんな彼女にジョニーは「同じ道を歩むことだけが仲間ではない」と語り、仲間とは何かという問題を提示する。これが128話における真の問題となり、凛のPD回は二段構えの構成をとることになった。そして凛はこの問題の答えをあかりたち先輩を見ることで解決していく。お天気キャスター、歌手、モデル、女優とまったく違う道に進みながら支え合う4人の姿を見て、ジョニーの言葉を理解するに至る。このシーンはあかりたちのやり取りが図式的すぎて、正直ちょっと「出来過ぎ」ではあるのだが、凛に道を示すという点では優れた演出である。

 この話は「本当の仲間は離れていたって仲間」という広く女児アニメが最後に辿りつく結論の一つをテーマを黒沢凛の成長譚に組み込みこんでいる。そしてその上、凛の目線を通したあかりたちの成長のエピソードと、サニーとジョニーという男二人の夢という要素を合わせた盛りだくさんの内容となっている。後輩、先輩、大人という異なる層の物語を有機的に統合し、なおかつ今までのPD回の常識を変えた128話は、傑作というほかない優れた一本である。

 

・141話「ホットスパイシー・ガールズ!」

脚本:大知慶一郎 演出:米田光宏 絵コンテ:佐山聖子 作画監督:酒井香澄、北原章雄

 ひなき&珠璃のユニット「情熱ハラペーニョ」は、クールなダンディヴァ、王道のskipsに挟まれた三枚目の立ち位置になり、見せ場という点で若干不遇だった。そのあたりのフォローも兼ねた小エピソードとなっているのが141話である。こういう洗練された日常話こそアイカツの、ひいては4クールアニメの真髄だろう。

 やはり、ひなきと珠璃の描写がよくできている。二人して表情がコロコロ変わり、生き生きしている。「世界げきからフェス」を盛り上げようとする二人の息はぴったりで、まさしくベストパートナーといったところである。正直、珠璃の父親がメキシコ料理ブースを乗っ取っている気もするが、そこはご愛嬌といったところか。

 一方でこの話には、ひなきの抱える問題の解決という大きなテーマもある。小さい頃から芸能界で生きるがゆえにアイカツに閉塞感を抱えていたひなきは、登場時から自分の壁を壊すものを求めていた。その彼女の問題の解決がこの話では示されている。あかりやスミレとの出会い、そして珠璃との触れ合いで、自分で壁を壊して「新しい」ものを探していける、そんな成長をひなきは遂げた。141話の舞台設定は彼女の成長を示す上で非常に上手く働いていて、フェスを盛り上げるアイディアを出す姿や、ドレスのデザインに迷うデザイナーKAYOKOへのアドバイスする様子にひなきの成長が見せるようにされている。とりわけKAYOKOとの意見交換の場面は、モデルとしてのひなきのその後の道をも予感させるものとなっている。

 

 

まとめ

 選んだ8作を眺めてみると1~3月放送の話が半分以上になっていた。同様にスミレ回も多いが、単純に僕がスミレ派というのもあるものの、王道を走らざるをえないあかりに比べて鋭いエピソードが多い印象があったからでもある。あかり自身は初期の成長譚を2期で消化しているからというのもあるかもしれない。

 僕自身は、4クールアニメの真髄は何気ない日常回にあると思っているので、なるべくそれを優先しつつ、先輩後輩もの、家族、PD回など、バランスよく配置しようとはした。思ったよりもシリアス回を選んでいて、これは意外だった。よくできているものの、テーマが選んだ8つとかぶったために泣く泣く外したものもある。特に観てほしいのはこの8つだが、他のも観てほしいことに変わりはない。

 3rdシーズンは、シリーズとしての深みが増し、より丁寧なストーリーを多く生み出した。遂にスターライトを飛び出す4thシーズンは、この下地を大いに利用して新たな挑戦を続けてほしい。