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アニメ『すべてがFになる』の予断を許さない印象

 原作シリーズの、というより森博嗣のファンであることもあって、秋から始まるノイタミナ枠のTVアニメ『すべてがFになる THE PERFECT INSIDER』をずいぶん楽しみにしている。しばらくまったく情報が出なかったので、本当に放送するのかと危ぶんだが、ようやくPVやらCMやらが出だしたので一応大丈夫なようだ。『すべてがFになる』、ひいては「S&Mシリーズ」のファン層とノイタミナファン層がどの程度かぶっているのか、僕としては定かではない。しかし、せっかくアニメ化するのだから、盛り上げも兼ねてなにか書いてみたい。今回の趣旨は、ファンから見て今回のアニメがどういう位置取りかというのをなんとなく書いていくというものだ。どんな作品か知らないが楽しみにしているという人に、ぼんやりとイメージを掴んでもらえれば幸いである。

 

○全体・構成

 タイトルにもなっている『すべてがFになる』は森博嗣のデビュー作で、犀川創平と西之園萌絵を主人公とした、その後十作続く「S&Mシリーズ」(犀川&萌絵シリーズ)の第一作である。『F』自体は小説一冊分の分量しかないので、アニメ化するとなるとシリーズの他の作品なりも映像化することになる。そうすると、どれを映像化するかで結構話は変わってくるわけで、アニメ化発表後はしばらくそこが注目されていた。

 

 しかし、意外なことに詳細なクレジットが発表されてみると、シリーズから原作となるのは『F』のみで、あとは「四季シリーズ」という別シリーズが選ばれたことが判明した。このシリーズは、『F』の重要な登場人物にして、シリーズのキーパーソンともいえる真賀田四季というキャラクターの人生を描いた四部作で、「S&Mシリーズ」よりしばらく後に書かれている。

 

 真賀田四季は、「天才」と称され、作中では神に最も近い存在と言われている。非常に雑な言い方をすれば、森作品でも図抜けて「ぶっ飛んだ」キャラクターである。そんな四季を中心に据えた「四季シリーズ」が『F』と並んで原作となっているということは、今回のアニメは、かなりの程度真賀田四季をフィーチャーした内容になると推測される。個人的にはこれはなかなか面白い試みで、同時にアニメという媒体に非常に適したものだと思っている。

 

 「S&Mシリーズ」は基本的にミステリィである。殺人事件が起こって犀川創平が解決するというプロットがそれなりに守られている。しかしそれは逆をいえば、アニメということを考えると少々事件が複雑すぎるということでもある。要するに、きちんと描ければ一作辺り3話以上かかってしまうような内容なのだ。このシリーズは、『F』からある程度間をおいて10作目『有限と微小のパン』で真賀田四季が再登場して終了するという流れがあるため、ノイタミナの11話という尺(最近はそうでもないが)にはそぐわない。どうしてもいくつか事件をピックアップしてそれとなく終わらせるという形にしかできないのだ。

 

 それを考えると、事件自体は『F』におけるもの一つに絞り、四季というキャラに重点を置くスタイルは、アニメという媒体をよく理解したものであるように思える。無理に「ミステリィ」を押し通すのではなく、森作品の大きな魅力の一つである「キャラ」で押していく。これはかなり冴えたやり方である。

 

○キャラクターデザイン

 『F』はこれまでにも漫画やゲーム、それに同人やらで何度もイラスト化されている。森博嗣氏は、「読者は美形設定のないキャラでも美形と思う傾向がある」みたいなことを以前書かれていた。四季や萌絵はそもそも美形なのだが、犀川あたりがすごい美形なのは確かに違和感がないでもない。とはいえ、森作品は独特な透明感を持っていて、なんとなくキャラを美形と思ってしまいがちではあるのだ。そんなこともあってか、「S&Mシリーズ」のキャラは全体的に美形というのがなんとなくファンで共有されている印象だった(と思う)。

 

 その点、今回のアニメにおける浅野いにお氏のデザインは、その潮流と逆行する挑戦的なものである。やはり髪がぼさぼさで暗い表情の犀川のデザインが目立つ。美形犀川でも学者という「インテリ」な部分は表現されるが、今回はそれに加えて犀川の「変人」という部分を誤魔化さずに映し出している。他に根拠なく美形にされる筆頭が、犀川の講座の助教である国枝桃子というキャラなのだが、彼女も今回は作中の記述優先であまり美形になっていない。全体としてかなり原作の記述を反映させたものが多く、これは森博嗣のファンの間でもちょっとした傾向の変化が起こるかもしれない。

 

 あと、色んな人のデザインを見ていて、どの人も犀川と萌絵と四季、三人のうちどれか一人になんとなく比重を置いていると、個人的には感じている。このデザインは四季が描きたくて成立した、こっちは犀川が描きたい、あっちは萌絵が、という風に、三人を等分に書きたいというのはあまり見ない気がする。ちなみに、浅野氏のデザインは犀川に比重があるかなと勝手に思っている。

 

○キャスティング

 まず、木戸衣吹さんが真賀田四季役に抜擢されたことに一番驚いた。今までいくつか観てきた役柄からしてまったくのノーマークだったからだ。しかし、言われてみれば制作側の意図はなんとなくわかる気がする(気がするだけだが)。真賀田四季は独特の「透明感」のあるキャラクターなのだが、その表現には「知的で冷静な女性」と「少女のような純粋さ」という二つのアプローチがあるように思う。僕自身は前者をなんとなく想像していたのだが、確かに後者も十分あり得る方法だ。アニメサイドの思い描く真賀田四季は恐らく「少女」という要素が強いのだろう。キャラデにもなんとなくそんな方向性が見える。

 

 加瀬康之さん演じる犀川は、思っていた以上に声が低く、年齢を高めに設定していた。とはいえ、犀川は三十代のおっさんなのでこのぐらいで本来なんの問題もない。これも原作に寄せた結果だろう。渋い犀川が楽しみである。萌絵役が種﨑敦美さんになったことは、制作サイド、というかノイタミナサイドは萌絵を『残響のテロル』のヒロインのようなイメージで捉えているからかなと邪推している。かなりこじつけなのだが、それほどに最近のノイタミナのキャスティングは過去作とかぶっている場合が多い。ともあれ僕個人の萌絵のイメージより「可愛さ」に寄せた感じになりそうなので、どんな化学変化が起こるか楽しみである。

 

 ちなみに現時点で一番読めないのが儀同世津子=堀江由衣で、最も納得しているのが島田文子=日笠陽子である。

 

○終わりに

 放送前にとりあえず書いとくかという多分に思いつきに依るところ大きい記事なので、タイトル通り予断を許さないものである。少しぐらい当たっていればこちらの面目も立つのだがと思いつつ、放送を心待ちにしよう。