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一人と一人、一つと一人の距離ー『Fate/stay night  UBW』25話

 ufo版『Fate』との距離感はとても難しい。元々思い入れのある作品ということもあり、ともすれば内容そっちのけの絶賛になってしまうし、かといって気にしだせば原作との相違に文句をつけたくなってしまう。再アニメ化という経緯もあり、この作品において客観的にみて中立という態度をとるのは随分骨が折れたもの。そんな感慨とともに最終回を観ていた。

 

 聖杯戦争終結後に丸々一話を割くと知った段階で、なんらかのオリジナルが入るだろうという予想は当然あった。自分としては原作におけるエピローグ、つまり士郎がまだ高校生のエピソードを増やすのだと思っていたが、意外にもロンドン編が掘り下げられていた。嬉しい誤算である。ゲームのほうでも断片的に語られるのみだったロンドンでの様子やルヴィアの登場は、観ていて楽しくないはずがない。また、もう一人の新たな登場人物であるロード・エルメロイⅡ世は、勿論『Fate/Zero』のウェイバー・ベルベットであるわけだから、このアニメが時々行っていた『Zero』との連結という意味でも有意義なものだったろう。士郎や凛のこれまでと違ったビジュアルも楽しさに拍車をかけている(凛のビジュアルは『HF』で見た気もするが)。

 

 ただ最終回をそう手放しに絶賛できないというのはある。観ていて楽しいのは間違いない。ロンドン編が観られて嬉しいというのもある。しかし、それだけでやたらに褒めてはいけないというのはずっと主張してきた。だから気になったこともやはり書いておこうと思う。正直なところ、最終回はどこを強調したかったのかイマイチわからない。士郎の理想というテーマの部分は確かに重要ではあるのだが、今までの話がそこを原作やDEEN版以上に強調して描いてきたので、もう敢えて言わなくてもわかるような気がする。逆にそちらは物語の最後として入れねばならぬから入れただけで、ロンドン編がメインなのだと考えるともう少しロンドンの描写を増やしてほしい気はする。学院描写、セイバーの墓参り、テーマの反復などやっていることが分散してしまっている。

 

 この中途半端な印象を尺余りで説明することは容易い。尺が余ったからロンドン編を足したのだ、凛とルヴィアの決闘シーンがなぜか長いのがその証拠だ、というわけだ。それもあながち嘘ではないだろうし、ならばエピローグをもっと丁寧にすればよかったという意見もわからないではない。とはいえ、前にも述べたがufo版はとりわけテーマの問答を重視しており、バトルを削ってでもその描写を増やしていた。だから、エピローグで今更語ることがほとんどないのだ。エピローグ部分を丁寧にして増えるのはテーマの部分だろうし、そこに尺を割くのはもったいない。ならばファンが望むロンドン編を可能な限り詰め込もう。そう考えた結果の最終話と考えるほうが公平なのかもしれない。だから最終回は観たいものに溢れた楽しい作品になっているし、それ故二つのエピソードを組み合わせただけで手一杯の若干中途半端なものにもなっている。

 

 それでも最終回を観ていて素直に良いと思ったのは、士郎と凛の関係の描き方である。聖杯戦争以後の二人は夕暮れの教室のシーン以後は今まで描かれていなかったが、今回の25話で凛と士郎の関係というのは「パートナー」なのだなと強く感じた。どうしてもゲームだと恋愛関係で二人を見てしまい、その後の二人も「カップル」になっていくのかなと考えていたが、そう単純ではないようだ。いや、二人が恋愛関係にないかというと微妙だけれど、少なくとも最終回では不思議とそれをあまり感じさせない描写であった。

 

 士郎と凛の距離は確実に縮まっている。どうも同棲しているらしいことや、ルヴィアとの喧嘩の後、士郎の膝に寝る凛の姿、電車で士郎の肩にもたれて寝る凛、と随所にその親密さは窺える。しかし、同時に二人は愛し合う男女ではなく、共に過ごす理解し合った二人といった風だ。それが恋人同士ということではないかと言われればそれまでだが、なんとなくそのちょっと上あたりを狙ったのではないか。『UBW』のその後の展開を考えると、聖杯戦争中のように、恋愛関係で捉えられる主人公とヒロインという枠組みは、間違いなく用をなさない。遠坂凛は衛宮士郎の異形の人生に付き合っていくという選択をした。ならば二人が「カップル」というより「パートナー」となっていくのは自然なのかもしれない。凛と士郎には、そうした老成した雰囲気すら感じる。

 

 最終回での凛は今までで一番ヒロインらしかった。そして同時にもはやヒロインではない、その先の段階に進んでもいた。その何とも言えない距離感。それが距離感の取り方に苦心したこのアニメが僕にくれた最後の贈り物だった。