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リアリティの線を引く 『響け!ユーフォニアム』を巡る問題

 リアリティの線引き、というものがしばしば問題になる。今の展開と前の展開で整合性がとれていない、世界観が曖昧になってしまっているなどなど、批判の形は様々だ。僕自身は『週刊少年ジャンプ』を読み続けているせいもあるのかそれほどこの線引きは気にならないのだが、この『響け!ユーフォニアム』については流石にちょっと気になった。


 この作品では二つの要素がせめぎ合い、線引きを必要としている。「アニメらしさ」と「リアル青春部活もの」の二つだ。『ユーフォニアム』は青春ものを謳っており、吹奏楽部の活動を丹念に描いていくことに主眼を置いている。だから、基本的にこの作品は「リアル青春部活もの」であるはずだ。バスケでいえば『スラムダンク』だ。間違っても、ゾーンに入ったりしないし、天帝の眼を使ったりもしない。


 ところが、最近の『ユーフォ』はそのあたりは微妙に怪しい。第8話の久美子と高坂さんが山登るシーンにそれは顕著だと思う。正直な話、このシーンでの高坂さんの台詞は全体的に意味不明である。狙ってやってはいるのだろうが、これまでのシーンからの飛躍がすごく、また支離滅裂である。今までのところはプライドの高いキャラクターぐらいで理解できたのだが、これで一気に電波キャラになってしまった印象がある。別にこれが沢山放送されている「アニメ文法に基づいたキャラによる」アニメならばなにも問題はない。だが曲がりなりにもリアル系を志向するなら、急にこんなぶっ飛んだキャラを出されると挨拶に困る。

いやまあ、僕は昨今の女子高生事情に明るくないので、これが女子高生のリアルです、と言われるとぐうの音も出ないのだが、それにしてもこういうヘヴィーなキャラクターを青春部活ものと両立するというはけっこうな挑戦だろう。それならばそれなりの準備がいるように思う。そして僕が見たところ、高坂さんという際物を受け入れる準備を今までの話でしていたとは思えない。


 久美子×高坂(高坂×久美子か?)のカップリングがどうのとかそういうのは置いておいて、この作品の観方が2パターン存在してしまっている。一つはメインストーリーを追っていく部活ものとしての観方。もう一つは濃いキャラクターたちの織りなす人間関係を観て行くいかにもアニメ的な観方だ。どっちも一緒にすればいいじゃないと言われそうだが、何度も言っているように『ユーフォニアム』においてこの二つは衝突してしまっている。今描いているキャラは部活ものにはそぐわないし、キャラでいくなら部活はいらないだろう(注)。


 インタビューを見ていると、スタッフが「リアルではなくてリアリティが重要」と言っていた。なるほど至言である。いくらリアル青春ものといったって、ガチガチのリアルが観たいわけじゃない。きっとそれは観ていて面白いものじゃないだろう。幾分アニメナイズすることは必要不可欠だ。しかし、だからこそどこにリアリティの線を引くかということが大事なんじゃないだろうか。軸足を部活ものに置くのか、キャラものに置くのか。それはリアルならぬリアリティを追及する作品の果たすべき至上命題だと思う。


 京都アニメーションで恋愛を取り上げて比較的リアルタッチで描いたものに、『たまこラブストーリー』がある。あちらは観ていてそれほどリアリティの問題は気にならなかった(あくまでリアリティを普段気にしない僕の意見だが)。そうしたことから考えるに、たぶん僕は「アニメ文法で作られたものがリアル志向になる」のはよくても、「リアル志向のものがアニメ文法に走る」のをよいと思えないのだろう。黒子テツヤが青春の汗を流しても問題はないが、桜木花道にミスディレクションをやられては困る。あれはあくまで『黒子のバスケ』の世界でやって輝くものだ。完全に個人的好みなのだろう。だが、そういうことは決して馬鹿にならない要素だと思うのだ。

 

(注)9話で葉月の失恋騒動を「どうでもいい」といきなり切り捨てたあすか先輩の描写にも正直戸惑った。あそこまで人の行動に無関心でいられるものだろうか。