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『WHITE ALBUM 2 ミニアフターストーリー』

『WHITE ALBUM 2 ミニアフターストーリー』

発売元:Leaf

企画・シナリオ:丸戸史明 with 企画屋

キャラクターデザイン:なかむらたけし

 2014年の動向を見ていると、『WHITE ALBUM 2』は、プロジェクトを畳んでいくようだ。これはアニメの2期でもやらない限り、変わらないだろう。「同好会ラジオ」が最終回を迎え、夏コミで「お疲れ様本」が発売され、と続いた『W.A.2』の最後を飾るのが、この「ミニアフターストーリー」である。

 

 大まかにいって、『W.A.2』は「introductory chapter」「closing chapter」、「coda」の三部構成だが、「ミニアフター」は最終章「coda」の後のストーリーだ。だから、千晶や小春、麻里さんの話はない。中身は「雪菜true」と「かずさtrue」のアフターストーリーの二本立てである。

 

 「coda」の構造について再確認をする。最終章でこの作品の主人公・北原春希は一つの重大な決断を迫らせる。小木曽雪菜を選ぶのか、冬馬かずさを選ぶのか。もしも雪菜を選べば、かずさ一人の涙と引き換えに、雪菜だけでなく友人たちや家族といった全ての人の幸せが約束される(だから雪菜trueはこの作品のグランドフィナーレなのだ)。もしもかずさを選べば、他の全ての人の幸せを犠牲にして、冬馬かずさ一人を幸せにすることができる。つまり、「雪菜true」と「かずさtrue」は「一人の不幸みんなの幸せ」と「みんなの不幸と一人の幸せ」のどちらを取るか? という選択であった。そして、「幸せへと戻る道」と「幸せへと進む道」は、二つの選択肢のその後を照らし出している。それぞれ順に見ていこう。

 

「幸せへと戻る道」(かずさtrue)

 かずさtrueは「みんなの幸せを犠牲に、一人の幸せを選んだ」ENDである。北原春希は、冬馬かずさという一人を選ぶことで、小木曽雪菜の幸せや、友人の飯塚武也や水沢依緒たちとの友情を捨てることになった。「幸せへ戻る道」は、身に余る罪を背負い、日本を去っていった二人の再生の物語でもある。

 

 かずさがありえないぐらいに可愛い。「coda」を経て結ばれた後なので、デレまくっている。かずさファンなら必見の内容だろう。元々かずさは、デレてしまえば一番わかりやすく可愛いキャラだが、その特徴が色濃く出ている。

 

 また、ストーリー全体を通して、後述する雪菜ルートに比べて登場キャラが少ない。主に春希、かずさ、冬馬曜子、美代子さんぐらいだ。かずさを選ぶということが本質的に、春希とかずさの二人だけの話になる、ということの表れだろう。

 

 突然の出国によって、ぽっかりと空いてしまった時間を結婚式という形で。途絶えてしまった友情を、小木曽雪菜からの和解という形で。二人は失った幸せを取り戻した。「coda」のかずさtrueが最も苛烈なストーリーだったことを思えば、このアフターストーリーはご都合主義に思えるかもしれない。皆の幸せを犠牲にしても、結局赦してもらえるのか、と。だがしかし、この「赦し」こそが、二人を幸せへと戻した小木曽雪菜の最大の特徴なのだ。

 

 小木曽雪菜は決して北原春希を否定しない。むしろ彼を徹底的に肯定する。『W.A.2』の根幹には、罰を望む北原春希と罪を赦そうとする小木曽雪菜のすれ違いが存在する。かずさとの関係について、春希は強く罪悪感を覚えており、常に雪菜に糾弾されることを求めていた。しかし雪菜は雪菜で春希とかずさの間に割って入ってという負い目があり、自分を裏切った春希を赦し続けるという奇矯なメンタリティを形成した。「closing chapter」で一応解消されたこのメンタリティは、春希がもう一度雪菜を裏切るかずさtrue後半でもう一度復活している。雪菜は決して春希を否定しない。そして、そんな雪菜だからこそ、再び二人を赦したのだ。

 

 小木曽雪菜という「肯定装置」の歪みは治せないまま、それでも二人は雪菜の献身により、幸せへと帰っていく。痛みがなくなることは決してない。それでも「coda」よりは一歩も二歩も前に進んだ二人の歩みであろう。

 

 

「幸せへと進む道」

 「一人の幸せを犠牲に、みんなの幸せを選んだ」雪菜trueのその後のおはなし。かずさルートとは対照的に、こちらは武也や依緒、朋といったメンバー総出演のにぎやかな内容となっている。雪菜と共に幸せを築いた春希が、その先へと進んでいく、やはりグランドエンドといえるものだ。

 

 こちらも基本雪菜はデレっぱなしである。いや雪菜がツンツンしていたことは一度もないのだが(ccのときでさえもだ)、それでもこれはなかなか、というあっまあまの新婚生活が描かれている。このルートは二人だけでなく、武也と依緒もあっまあまである。サブキャラながらナイスアシストで本編を支えた二人のその後が気になる人はぜひ注目である。

 

 このルートにおいて、かずさの存在は極めて希薄である。作中で彼女は海公演kに出かけており、ラストに現地からの手紙だけが届けられるのみである。雪菜trueはかずさ一人に犠牲を強いたルートであり、これは当然かもしれない。最初こそ本心が見えづらくしてあるが、根本的にかずさは雪菜より素直なキャラクターであり、雪菜よりはるかに「普通の」キャラクターである。かずさは雪菜のように、自分を選んでくれなかった相手を全面的に「赦す」ことはできない。思いを常に抱えたまま、二人と関わっていくしかないのだ。皮肉なことに、大親友の二人の幸せはかずさの協力なくしては成り立たないのだから。グランドフィナーレとされるこのルートは、まさしく大団円といえる構成だが、犠牲を払う者にとっては一番重いルートでもあるのだろう。

 

 痛みは抱えたまま。それでも皆は幸せへと進み。純白の冬の物語は、未来の幸福を覗かせ、その幕を閉じる。