アーカイブ

カテゴリ

アニメ

漫画

映画

小説

その他

 

『映画プリキュアオールスターズ 春のカーニバル』

 面白いか面白くないかでいえば、間違いなく面白い。良かったか悪かったかでいえば間違いなく良かった。ただ、仮に点数をつけるとしたら、減点法か加点法かで随分話が変わってくる作品である。

 

 減点というかマイナスのポイントはといえば、やはりストーリー性の欠如だ。いや、それは正確ではないかもしれない。ストーリーがないというよりもストーリー性を成り立たせる前提がそもそもないと言ったほうが正しい。

 

 本作は基本的に歴代のプリキュアの楽曲をダンスを交えながら披露するところに主眼が置かれており、ストーリーはライブのような展開を成立させるために存在している。だから『オールスターズ』といっても、『DX』や『NS』のように「継承」や「ともだち」といったテーマがはっきりした、ストーリー的深みがあるわけではない。『オールスターズ』による「プリキュアシリーズ」の発展はとりあえず止まったと言ってよい。ただまあ、40人ものプリキュア全員をある程度活躍させなおかつ無理のないストーリーにするのは土台無理であり、こちらも代替案が特に思い浮かばない以上、なんら批判するつもりもない。むしろ、何人かを切り捨てたりせず、全員を輝かせようとしたスタッフの熱意をこそ評価すべきだ。だから問題はライブ形式というところではなく、欠けたテーマの代わりに持ってきた「歌とダンス」という概念だ。

 

 『春のカーニバル』では「歌とダンス」が大きな意味を持つ。終盤ピンチに陥ったとき春野はるか達は、「歌とダンス」の力を信じ、弱気になった心を奮い立たせる。本編全体を通してこの「歌とダンス」の力は強調され、従来の『オールスターズ』における「プリキュア」概念の代わりのような働きをしている。「歌とダンス」は、ストーリー性を捨て、ライブ形式を選んだこの作品にとって、土台ともいえる要素となる。

 

 しかし、だ。そもそもプリキュアというシリーズは今まで「歌とダンス」の力なんて強調してこなかった。確かに『フレッシュ』はダンス、『スイート』は音楽が重要な要素だったが、それはあくまで各作品内に留まるものであり、シリーズ全体を貫く要素として音楽があるわけではない。だからこれまでの「プリキュア」という概念に代わって「歌と音楽」といわれても、いまいちピンとこない。『オールスターズ』の最大の強みであるはずの積み重ねた歴史がまるでないのだ。こうなると「歌と音楽」が土台となるこの作品の一応のテーマが危うくなってしまう。ライブ形式というのは新たな冒険である。しかし、第一作目ではテーマ性というものを取りこぼしたのも事実だろう。

 

 さて、加点ポイント・プラスのところに移ろう。述べざるをえないからネガティブなことも書いたが、基本的に僕はこの映画に満足している。それは『春のカーニバル』が『DX』以来の、歴代プリキュアの非常に繊細な描写を引き継いでいるからだ。

 

 この作品のライブシーンはずっと3Dキャラが躍っているのではなく、ダンスの間にその楽曲が使用されたシリーズのショートエピソードが挿入されている。これが凄まじい出来なのだ。エピソードの方向性は様々。TVシリーズを総ざらいするものもあれば、日常のワンシーンのものもある。前者であれば、『フレッシュ』のイースの場面や『ドキドキ』のマナとレジーナのシーンのようなシリアスパートが効果的に盛り込まれている。後者は、TVシリーズが終わったあとにこんな日常が続いていればいいなとファンなら誰でも思うようなシーンがてんこ盛りである。

 

 どれか一つ選ぶのは難しいのだが、やはり個人的に大好きなシリーズ『Yes!プリキュア5』のシーンを挙げたい。ナッツハウスでのある一日を描写していて、いつもながらの面々が楽しめる。寄り添うこまちとナッツ。うららをお姫様抱っこするシロップ。かれんやりんに飛び込むくるみことミルク。なんともいえない距離感を見せるのぞみとココ。リリカルさのなかにロマンチックな雰囲気も漂わせた。『プリキュア5』ファンには、『NS3』に続く感涙もののプレゼントだった。

 

 また、ライブ形式というのは単純に盛り上がる。TVシリーズで見ていたダンスが大スクリーンの迫力で登場し、そもそもダンスがなかった楽曲にはダンスがつく。盛り上がらないはずがあるまい。予告でも流れていた40人がダンスする『イマココカラ』は流石に圧巻だった。毎年ハードルが上がって大変だと思うが、いつでも予想の上を行くダンスで、頭が上がらない。

 

 インタビューでプリキュアの父、鷲尾天氏が「うちには、40人プリキュアがいること」が強みだとおっしゃっていた。『アイカツ!』や『プリパラ』といった作品と競合し、今年はそちらに寄せた路線か?とも言われたが、やっぱりプリキュアはプリキュアだった。完全なミュージカルも作りたいとのことで、どうなるものか気になってしようがない。ストーリー性のある『オールスターズ』も捨てがたいが、どんな形でもプリキュアであることを忘れないならば、見届けていきたい。『春のカーニバル』はそんな気持ちにさせてくれる、新章の幕開けだった。

 

補足

 敵キャラであるオドレン、ウタエン役のオリエンタルラジオについて。めちゃ上手いかというわけではなかったけれど、二人の地声と違うキャラ声をきちんと出していたのはすごかった。あと、最初のブレイク時(武勇伝の方)から高度なリズム感覚を持つと言われてきたオリラジだが、その冴えは歌唱パートで遺憾なく発揮されていた。『オールスターズ』は、世界規模の圧倒的パブリックエネミーから個人単位のプライベートエネミーへと敵が変化していったが、新章突入に至って、「せこい敵キャラ」という今まであまりなかった像を(ブンビーさんとかはいたが)鮮やかに表現していたんじゃないかと思う。

 

 ラストの実写ダンスは、ちょっと前の『獣電戦隊キョウリュウジャー』のEDを思い出した。こういう視聴者密着型の試みもいいのではないだろうか。ただ、同時に映ったモー娘。の映像の意味はあんまりわからなかった。Berryz工房が以前『映画ふたりはプリキュア MaxHeart 雪空のともだち』の主題歌を歌っていたつながりなのかなと推測するのだが、急にアーティストを出しても、整合性がとれている気がしないので、これはしなくてもいいんじゃないかなと思う。主題歌の『イマココカラ』は、どちらかといえば挿入歌版の方が好きである(振り付けは真島茂樹氏)。