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『アイドルマスター シンデレラガールズ』3話

 随分遅れてしまったが、3話の感想を書いてみようと思う。先に大雑把な印象を言うと、非常にテクニカルなエピソードであった。だから、どうしても技術云々に話が寄ってしまいがちだが、なるべく観ていたときの感覚も拾っていくように努めたい。


 まずはAパートから。先につまらない話を済ませよう。作画だ。正直、近年のアニメの水準から見ると、かなり崩れていた方だろう。作監のクセという意見もあるようで、その辺の違いは僕にはわからないのだが、観ていてわりと気になったのだから、直したほうがいいんじゃないかとは思った。わりとAパートだけが批判に晒されているが、Bパートもライブシーンはともかく、わりとアレだった気はする。続く4話がそうでもない以上、まあ色々あったのだろう。この話はこれぐらいにする。


 Aパートで興味深いのは、視点の取り方だろう。第2話がキャラ紹介ということもあって、卯月、凛、未央の三人に固定で、他のアイドルを順に映していくという視点の取り方だったが、3話は逆に、他のメンバーの視点から、三人を捉えている。視点人物は一定せず、どんどんと切り替わっている。円の中心に三人がいて、円周からどんどん半径の線が引かれていると言えばわかりやすいだろうか。この手法を用いることで、常に三人の奮闘を映しつつ、他のアイドルの葛藤や思いを描写することが可能になっている。これは2話に続く、キャラの掘り下げという意味もあるだろう。事実、Aパートでは、ライブに出たいという重い、素直に応援する気持ち、いずれステージに立つことへの恐れなど、多くの感情が入り乱れている。Bパートに比べて穏やかな雰囲気であり、展開も緩やかなAパートではあるが、随所にその後への伏線や準備が見受けられ、存外隙が無い。


 さて、そのAパートを受けてのBパートであるが、1回目観たときもすごいとは思ったのだが、改めて観てみると寒気がするぐらい凄い。何が凄いって演出の間の取り方が神がかっているのだ。Bパートは緊迫した展開が続き、三人の心情が大きく変化するが、その変化はほんの一瞬のうちに起こっている。ステージに立つことのリアリティが押し寄せるのは、会社の役員が楽屋を訪問し、先輩アイドルたちが真っ先に挨拶をした瞬間である。紛うことなき本物の現場を前に、三人は立ちすくむ。たかだか挨拶一つ、ついさっきまで笑顔で握手をしていた空間は、一気に緊迫感を帯びる。そこからはもう怒涛の展開である。奈落からのジャンプのミス。募る不安。一気に暗くなる色彩。喋らない未央。敗戦ムードが早くも漂う。


 しかし、あわや失敗かと思われたストーリーは、またしても劇的に変化する。それも掛け声ひとつで。不安に押し潰されそうになりながらのステージ前から、掛け声の勧めからステージに出るまで。時間にしてみれば、1,2分あるかないか。今までのプレッシャー描写を考えれば、呆気ないぐらい簡単に全てが上手くいってしまう。普通なら、ご都合主義の誹りは免れない。しかし、この話には、そんな批判を考えさせる隙がどこにもない。圧倒的なまでの間の取り方、演出のキレと言わざるを得ない。


 3話は2話に続いて、「卯月&未央」と「凛」という形で物語が動く。「卯月&未央」はステージに立つことに当初楽観的で、反対に「凛」は不安を表明している。Aパートは常にこの構図で物語が進んでいく。この構図はある意味、Aパートの牧歌的雰囲気の象徴ともいえる。そして、Bパートで、三人がステージのリアリティを噛みしめたとき、卯月はこう言っている。


「どうしよう、凛ちゃん?」


 この瞬間、「卯月&未央」と「凛」という構図が壊れる。卯月は未央にではなく、凛に助けを求めたのだ。ある意味楽園ともいえた恐れを知らない段階は終わり、三人一緒に無情なリアルへと投げ出される。呼応するように、ここから未央は極端にしゃべらなくなる。そして、プレッシャーに耐えながら、楽屋を出る際、未央に「いくよ」と声をかけるのは、凛である。3話の前半では、凛が三人のなかの「外部」として機能していた。それゆえ、「内部」が機能不全を起こしたとき、助けを求めるのは外部の凛であり、手を差し伸べるのも彼女なのだ。


 また、3話のステージを通して、卯月と未央の考える「アイドル性」に変化が生じている。未央は、3話冒頭では、「何が起こるがまったくわからない。いやーアイドルってすっごく楽しいよね」と言っていたが、「なんかもう全部がキラキラしてた、アイドルってやっぱ最高」と述べている。アイドル性についてぼんやりとしか捉えられていなかった未央は、そのリアリティを実感し、その上でアイドル性を肯定している。これも一つの成長だろう。3話の最後に流れるCパート。「夢みたいですよね」という卯月の台詞と決意したように上を見見上げる、凛。最も夢を描けていなかった彼女が、最初に夢を明確に視たのかもしれない。