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『SHIROBAKO~上山高校アニメーション研究会~①』

『SHIROBAKO~上山高校アニメーション研究会~①』

作画:ミズタマ

原作:武蔵野アニメーション

脚本:杉原研二

レーベル:電撃コミックNEXT

出版:2015/1/27

 別媒体で第零話をやる作品は多いが、『SHIROBAKO』についてはなかなか興味深いものがある。

 

 本作は、現在放送中のTVアニメ『SHIROBAKO』の宮森あおいたち五人の高校時代、アニメーション研究会として自主アニメ制作に励んでいた頃が舞台の漫画版である。あおいたちがいかにして出会い、アニメ作りに情熱を燃やし、そしていかにそれぞれの夢を決意したかを描いている。本作は、アニメと違って他のサブキャラがいないため、五人のふれあいが多く、女の子たちの青春ものという色合いが強い。TVシリーズの雰囲気を想像していると、少し面食らう気もするが、実はこれがあまり違和感がない。それはどうしてなのか?

 

 本作は、社会人となったあおいたち(りーちゃんは大学生だけれど)の前日譚でありながら、TVシリーズ本編と大きく異なる描かれ方もされている。それについては、大きく二つのことが挙げられる。つまり、

 

 ・あおいたちが普通にアニオタであること

 ・なんか百合っぽいこと

 

のふたつだ。以下順番に見ていく。

 

 漫画版のあおいたちはフィギュアについて熱く語り合い、台詞の真似をしたり、一緒にアニ○イトに行って、グッズをあさったりしている。正直我々と変わらないオタクライフである。考えてみれば、あおいにしろ、絵麻にしろ、ずかちゃんにしろ皆アニメーションに関わる仕事をしているわけで、アニメに興味がないはずがない(まあ一概にそうも言えないが)。である以上、彼女たちがアニオタであることはなんらおかしいことではないのだ。しかし、TVシリーズでは、恐らく意図的にそのあたりの描写をカットしている。あおいたちは、自分たちが業界に入ったきっかけとなった作品への情熱などは語るが、一消費者としての考えは大して語っていないのだ。

 

 また、あおいたちの女子高時代ということもあってか、漫画版はけっこうスキンシップや、「大好き」などの直接的愛情表現が多いなどなど、なんとなく百合っぽい雰囲気を読み手に感じさせる。TVシリーズでも、五人が集まるシーンは数あれど、あまり百合っぽいシーンはない。あくまで同じ夢を追いかける同志、友達といった印象を受ける。元々『SHIROBAKO』という作品は、多少リアリティを犠牲にして、ヒロインが五人がアニメ業界に関わるという展開にしているのだから、百合っぽい展開にするというのが近年のアニメのメソッドからすれば当然なのかもしれない。とすると、漫画版はその手法に忠実であるともいえる。

 

 要するに、漫画版が持っているTVシリーズにない二つの要素というのは、『SHIROBAKO』という作品が本来持つポテンシャルなのだ。アニメーションに関わる女の子を主人公にしているのだから、アニオタとして設定することは、アニメの視聴者層としては、自分を重ねられるため共感はしやすい。百合っぽい展開によって、作品理解がスムーズにすることもできる。それでもP.A.WORKSはそれをあえて選んでいない。あくまで「働く女の子シリーズ」と言っているように(そんなシリーズ知らないけれど)、『SHIROBAKO』は働く彼女たちの奮闘と、夢への挑戦に焦点を絞っている。だから、「働く」というテーマを持つことができない高校時代を描く漫画版は、必然的にアニメが選択しなかった観点を採用していくのだ。そしてそれは、『SHIROBAKO』が本来持つものであるため、アニメと雰囲気が違っても大して違和感を覚えることもない。女子高を舞台とした青春もの、それも併せて『SHIROBAKO』なのだ。

 

 「こんなかわいい子が五人もアニメに関わっているのはおかしい」、「なんで全員女の子なの?」といった、リアル志向の作品に「萌えアニメ」テイストを入れることへの疑義が、『SHIROBAKO』には呈されてきた。しかしそれでもこの作品は、テーマに沿うように、いわゆる「萌え」成分の方向性を調整しているのだ。「オタクに媚びないP.A」と単純に割り切りたくはない。だけれども、P.A.WORKSが何を選んで、何を捨てて、『SHIROBAKO』という作品を作り上げているのか、それを知ることができるという点で、漫画版には第零話であること以上の意義があるといえるだろう。