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『暁のヨナ』15巻



作者:草凪みずほ

レーベル:花とゆめCOMICS

出版社:白泉社

発売日:2014/09/19

ジャンル:漫画

 そもそも『暁のヨナ』とはなんだ?という方はこちら。

 『暁のヨナのすゝめ~あなたがヨナを読むべき5つの理由~』

 

 

 前巻に引き続き、水の部族編の15巻。14巻では守られるばかりだった水の部族長の娘リリの活躍も描かれます。

 

 『暁のヨナ』はヨナの成長譚という側面もある作品ですが、成長の見せ方には色々あります。普通にそのキャラがすごくなるというのもあれば、かつてを知っているキャラに今の自分をみせる、といったものもあります。そんな数ある方法の中に、かつての自分と似たキャラクターを登場させるというものがあります。かつての自分の似姿を見ることで、その違いを読者に理解させる、そのために登場したのが14巻から登場する水の部族長の娘リリです。彼女は勝気ではあるものの、護衛のアユラとテトラの二人に守られるのが常で、世間のことをあまり知らないお姫さまです。そんな彼女が自身の無力さを痛感するのが、14巻でテトラが重傷を負う場面、そしてこの巻でヨナが傷を負う場面です。14巻最後で「あんたのようにわたしもなりたい」と涙を流したリリ。それは父親がスウォンに殺害され、宮廷を追われた直後のヨナの無力さと重なります。厳しい旅を経て、世間知らずな姫にすぎなかったヨナは、同じ無力さに涙する少女を導く存在にまで成長しているのです。

 

 そしてこの巻ではそんなリリの活躍が目玉です。父親に自分の思いを理解されず、水の金印を盗んで出奔するリリ。父親である水の部族長アン・ジュンキは一見消極的に見えますが、彼もまた深い思慮の末踏み出せずにいるのでしょう。この作品では様々な父親像が描かれています、ハクとソン・ムンドク、キジャと父親、シンアとアオ、カン・テジュンと父カン・スジン、そしてヨナと父イル国王。リリの父親自体の描かれ方はとりわけイル国王に似ています。どちらの父親も思慮深さを持ち、それ故に臆病者と思われてしまうが、(そう思われても仕方ない部分もありますが)その背後には深い娘への愛がある。二者はとても似た父親像を体現しています。

 

 一方ヨナとイル国王、リリと父アン・ジュンキの関係はかなり対照的です。ヨナは基本的には父親のことを尊敬しており、旅の道中でそれを揺るがしかねない父の政治の影の部分を見て、自分の気持ちと折り合いをつけていきます。対してリリは、勝気な性格のため父親に反発し、彼とは違う方法で国を救おうとします。彼女がいかにして父親の尊敬に足る部分を見つけ、父親と折り合いをつけていくのか、ヨナとはまた違った父親との関係性がどう発展するのか、今後の展開が注目されます。

 

 そして麻薬組織に立ち向かうべく奔走するリリはお忍びのスウォンと出会います。リリの話を聞き、「無謀でも現状を打破しようと力を尽くし奔る者を愚かだと私は思いません」と語るスウォン。国王殺しというこれ以上ない無謀な行動に出たスウォン、これまでの行動からイル国王殺しが決して私怨や己の欲望のためでなかったことはほぼ確実です。彼もまた逼塞した現状を打破しようと打って出た者の一人であり、スウォンとリリは、挑み続けるその姿勢において似ているのです。そしてそれは国という枠を超えて挑み続けるヨナの姿勢にも重なっていくものです。

 

 15巻の最後では三者が一堂に会し、闇商人ヒヨウ率いる麻薬組織に挑むことを決意しますが、ヨナはかつての因縁もあってスウォンと行動を共にすることに納得いかない様子。一方スウォンもは素直に受け入れるとは言い難いにしても、持ち前の冷静さで割り切っているところもあるみたいです。リリはリリで、自分の戦いに必死で二人の関係には気づいていないようです。三者三様の思いを抱えながら、共に一つの目的に身を投じる三人。抗う者たちが多く存在する漫画である『暁のヨナ』、彼らの戦いはなにを生むのでしょう。

 

 リリの決意と成長。スウォンの思いとヨナの行動。三人の抗う者たちの動きに、ハクや四龍の面々や水の部族をも巻き込んんだ大きな流れが生まれつつあります。いよいよ麻薬組織との最終決戦。ますます目が離せませんね。

 

 さて、ここからは限定版のドラマCDのお話。限定版が出るのは9巻以来ですね。『花とゆめ』本誌ではちょいちょいドラマCDが出てましたが、原作につくのは結構久しぶり、今回は四龍が全員揃い、ゼノ役に下野紘さんが参加されています。元からいたメンバーも変わらずの熱演ぶり。アオ役の山本希望さん、台詞ほとんど「プキュー」しかないのにすごいです。

 

 今回ドラマCD化されたのは、コミックス7巻第41話の「龍であり人であり」とコミックス13巻第76話「流れ者の市場」です。まずは最初の方から。「龍であり人であり」は惚れ薬ネタというラブコメならまあ一回はやるだろうというエピソードをまさかのヨナでやった回ですね。ヨナにしては珍しい直球のコメディ回なのでドラマCD向きですし、草凪先生もやってほしかったのかなぁと思います。コメデイの中にもキジャをメインにした四龍としてヨナを慕うことと人としてヨナを慕うことの差異に焦点を当てた意外と重要な回です。このドラマCDでは本格的にジェハが参戦していて、皆をいい具合に掻き回してます。諏訪部順一さんの演技もここぞとばかりにキレキレです。ベー様はこういうキャラがほんとにハマりますね。そして毎度おなじみの森田成一さん。キジャはオチ担当みたいになってますが、その何割かは森田さんが声を当てているからなのかもしれません。ギャグっぽいところ、シリアスなところ、コロコロ変わっていく愛されキャラになってますね。あと僕はヨナとハクの話が好きなので、「男の人にあんなに情熱的に口説かれたことないもの」とヨナにまったく思いを気づかれていないハクくんなんかが可愛くて仕方ないですね。

 

 そしてもう一つの「流れ者の市場」。僕、この話大好きなんですよね。火の部族編から水の部族編へとつないでいく中継ぎの回ですが、人々の生活や旅の一行の様子が描かれていて、完成度の高い回だと思います。この話からゼノが本格参戦です。ストーリー的ポイントといえば、ヨナとハクの関係と自分の気持ちと折り合いのつかないジェハといったところでしょうか。だんだんジェハのヨナへの思いも描かれていっていて、人間関係方面でも話に深みが出てきていますね。ヨナとハクに関しては、ハクがサービスで女性を抱きしめた時、ヨナが自分の胸をさすさすするシーンがとてもかわいいですね。原作から好きなシーンだったのでドラマCD化して嬉しいです。こういう動作は音だけだと伝わりにくいのですが、上手いこと斎藤千和さんが声を当てて、微妙なニュアンスを表現されています。それぞれの気持ちが絡み合いながらも最後は、ヨナが的当てをするシーンで爽やかに締め。この笑顔の輝きがやっぱりヨナですね。

 

 あとキャスト座談会。やっぱこれがあってこそのドラマCDだといつも思うのですが、今回は随分ぶっ飛んでました(笑)。またそれぞれ感想言うのかと思ったらまさか全編下野いじりに徹するとは。歌まで披露させられる下野さん。が、頑張るなぁ。他に類を見ないにぎやかな座談会でしたとさ。おすすめです。