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『Fate stay night [UBW]』第0話

 どんな方向性であれ、批評というものは批判的な目を持っていないと成り立ちません。その点でいくと僕なんかは奈須きのこの作品を全肯定してしまうところがあるので、多分に主観的になりがちです。ですので、あらかじめ言っておきます。今から色々書きますが、『UBW』素晴らしかった。やっぱFate最高だぜ。最終的にはここに落ち着くので、どうか暖かく見守ってやってください。

 

 第0話は原作のプロローグをそのまま映像化した形です。一瞬「これ原作知らない人に厳しくないか?」と思いましたが、よく考えれば原作もこの展開だったわ、と。ここは主人公衛宮士郎ではなく遠坂凛を視点人物にしている部分で、予備知識が多い凛の視点にしているため、多くのことが説明なしで提示されます。だからといって予備知識がいるとビビる必要はなく、すぐに衛宮士郎視点のストーリーが始まってそのあたりは補完してくれます。そこが来週の1話に相当するのでしょう。先に情報を大量に投下して、あとから回収するというのは、奈須きのこが多くの作品で用いる手法ですね。

 

 本作の制作は『空の境界』が高い評価を得て以降、TYPE-MOONとの関係が濃いufotableです。『Fate』の前日譚『Fate/Zero』も制作したufoが満を持して本編を作った形です。この会社はそれほど大量の作品を制作していませんが、一作一作が高いクオリティを誇ることで有名です。『UBW』も流石の作画といったところで、ありきたりですがアーチャーVSランサーなんかは凄まじいものがあります。あと個人的には画像にも挙げてる凛がビルの屋上にいるシーンが昔から大好きなので、ビル描写は感動しましたね。やはり伝奇はこうでなくては。キャラクターの質感も変わらず丁寧で(これは撮影頑張ってるんでしょうか)、頑張りを見せつけられます。気になったところと言えば、凛の顎と(尖りすぎじゃね)横顔(誰も言ってないんだけど、眼の描写とかちょっと変な気がする)ぐらいでしょうか。背景とかも凝っていて、なんというか隙がないです。

 

 話が変わりますが、Fate本編のアニメ化はこれで3度目です。DEEN制作のTV版、DEEN制作の劇場版、そして本作です。最初2作は言ってしまえばあまり評判はよくなく、ufoによって塗り替えてほしいという意見も多く、なかには露骨に叩く人もそれなりの数います。確かにDEEN版の出来がいいかと聞かれたら、そこまでよくないと答えるしかありません、しかしそこまで叩くほどかといわれると、それも違うと言えるでしょう。最近やたらとufo版が神聖視されていますが、こちらにも問題がないとは言い切れないと思います。

 

 ufo版の問題点というか欠点みたいなもので最も大きいのは「隙がなさすぎる」ところだと思います。要するに悪い意味で出来過ぎなのです。これは『Zero』の時に感じたことなのですが、あの作品のアニメ化は確かにクオリティが高かったです。劇場アニメである『空の境界』ばりの質をTVシリーズで維持して、原作を忠実に再現したのは賞賛に値するでしょう。しかしその反面、意外性がまるでない気もしました。本当に小説をアニメに漏らさず移し替えることにあくせくした印象で、冒険をしていない印象が強かったのです。『Zero』の監督は攻める作品を多く作った監督ですが、1話のぐるぐる演出以外あまり目につくところがありませんでした。アニメ全編を通して予定調和な感が拭えなかったんですね。

 

 クオリティが高いなら文句をいうなという話かもしれませんが、面白いアニメというのは多く、なにをしてくるのか分からない手探りなところがあると思うのです。例えばufoが作った『空の境界』という映画はどこまでも冒険しているアニメです。まず原作の全7章を七部作の映画にするという発想がそもそもすごいです。そして1章であれば、原作の錯綜した時系列を整理して一つにまとめ、逆に5章ではあえて時系列をシャッフルさせ、原作ではそこまで派手でもないシーンを画面映えする大立ち回りに演出したりと、こちらの予想のはるか上をいく作品でした。でもこれもシャフトの「物語シリーズ」みたいに最初だからアヴァンギャルドな感じがしてよかっただけで、それを2作目の『Zero』に押し付けるのはどうなのか、とも思いました。しかし去年公開された『未来福音』を観て、やはり劇場版『空の境界』は作品単位で冒険していると確信しました。『Extra Chorus』の3つの短編を繋げ、かつ映像としてあそこまで映えるものにしたこと、『未来福音』の爆発シーンやトリックの処理、そして『未来福音・序』の圧倒的なまでの綺麗さ。どれをとっても事前の目算を軽々飛び越えてくる作品でした。

 

『Zero』もまた非常に豪華なスタッフが制作した作品で、事実出来はいいです。しかし身も蓋もない話、クレジットを見た時「これぐらいのクオリティになるだろう」とわかってしまうところがありました。そしてその予想を良い意味でも悪い意味でも裏切ることがなかったのです。もうちょっと冒険してほしい、そう強く願った作品でした。

 

 それは『UBW』にも言えることで、確かに0話の出来は凄まじいです。原作ファンも納得でしょう。しかしどうしても浮かぶのは、「この作り方ができれば、それは面白いだろう」というひねくれた考えです。ゲーム原作のアニメは常にアニメとゲームという尺の発想がまるで違う二媒体の差に悩まされ、展開のさせ方の相違にも頭を抱えます。なにかしら方法を考えないと、そのままアニメにすることなんてできないのです。しかし『UBW』はゲームの導入部というアニメ的手法から考えればかなりグレーな演出をまんまやることにゴーサインがもらえ、かつそれを1時間スペシャルで放送することができるという環境にあります。要するにゲームまんまをやって大丈夫なのです。そりゃ面白いわなぁと。

 

 DEEN版の時期にプロローグやろうと思えば、確実に1時間なんて枠取れないので、2週にわけてしなければなりません。2週にかけて主人公がまるで出ない内容をやる――確実に許可が下りないでしょう。というかむしろそっちが普通なのです。恐らく当時は初回1時間スペシャルもなかなかなかったでしょうし。DEEN版は常にメディアミックスのジレンマに悩まされていました。いかにして3つのルートを混ぜて2クールにおさめるか、いかに映画の尺におさめるか、そういう「縛り」のなかで戦っていたました。そういう奮闘がアニメ化の本当の面白さだと思うんですよね(DEENが成功したかというとそれは微妙ですが)。ufotableはある意味そういう戦いをしなくてよい環境にあります。ufoの功績のお蔭といえばそうですが、状況の違いを考慮に入れずに、DEEN版を叩き続けるのは、明らかに不公平ではあるでしょう。

 

 そう、0話の数少ない欠点は予想外のことが特になかったところです。原作を寸分たがわず写し取ったのはすごい、でも厳しい縛りの中でどう表現するかを模索するのもアニメの醍醐味なんじゃないの? そうも思うのです。

 

 とはいえ、原作のプロローグという比較的動きのない部分を1時間にまとめて、面白いものにしたのは流石です。次はついに衛宮士郎の視点、第五次聖杯戦争は動き始め、それから目を離せないこともまた確実なのです。

 

 

 

愛憎相半ばにしてもたちが悪いね。

だって大好きってだけ書いてもしょうがないじゃん。