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『残響のテロル』1~3話 ~抗うということ~

 ノイタミナの最新作『残響のテロル』、もう片方の『PSYCHO-PASS』が実質再放送である以上、このクール唯一のノイタミナ新作です。思うことは人それぞれでしょうが、観た人の多くがこう思うのではないでしょうか、ノイタミナっぽいと。ノイタミナっぽいとはなんなのか。具体的にどんなことを指すんでしょうか。

 ノイタミナは英語で「noitaminA」、ご存じ「Animation」を逆さにした造語です。アニメーションを逆転させるという意味を持ったこのノイタミナ。初期は女性もターゲットにして、あまりアニメ化されない少女漫画のアニメ化を行っていました。名前から宿命的に〝抗う〟という意味を強く持った作品が多いような気がします。というわけでいくつかのノイタミナ作品を抗うという観点から見てみながら、『残響のテロル』を考えてみようと思います。

 

 チョイスは本当に個人的かつ観たものに限られています。どうしても最近のが多くなってしまいましたね。ここに挙げていないのでも面白いのはあるのでご注意ください。

 

 

 『東のエデン』

 キャッチコピーに「この国の〝空気〟に戦いを挑んだひとりの男の子」とあります。日本の現代の枠組みというか、巨大すぎる見えない何かに抗っていたように思います。なにせ観たのが随分前なので、はっきりしたことは言えませんが、神山健治監督は近未来を見据えたSFっぽい設定がすごく上手い印象があります。「100億円で日本を救えるか」を競い合うセレソンそれぞれの抗い方があるのが面白いです。この作品が描いていた世界は今日ますますリアリティを獲得していっているテーマなのではないでしょうか。

 

 

 

『四畳半神話大系』

 これは森美登美彦の原作がある作品ですが、アニメとして観たとき、近年体系化されているアニメの手法に真っ向から抗っていると言えるんじゃないでしょうか。1話から11話を一方通行な横線として見るのではなく、最初から最後までを見通しながら細部を作り込んでいる作品です。ほとんど実写で画面を構成して、しかもキャラが「私」一人しかいないなんてことをやってのけた10話は他に類をみないものでしょう。固定化するアニメの手法に一石を投じた作品です。

 

 

 

『C』

 ものすごくノイタミナっぽい雰囲気なんですが、思い返すとあまり抗ってない気がします。独特な設定とか、色彩とかそのあたりが異質っぽかったんでしょうか。金融ネタというより普通にバトルが面白いアニメでした。キャラクターの狂気描写とかが上手かったと思います。一番の衝撃は羽奈日の扱いでしたが。意外と王道だったことが、個人的に放送中に比べて、放送後の印象が薄い理由なのかもしれません。

 

 

 

『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない』

  抗ってなくて売れたノイタミナアニメ筆頭じゃないでしょうか。たぶん一番売れたのはこの作品ですし、世の中的にはこれがノイタミナ代表作なのかもです。話としてはシリアス志向の青春群像劇。お涙頂戴な展開が鼻につくという向きもあるかもしれませんが、基本的に完成度の高いアニメでしょう。何はともあれラストをまとめきったことが大きいです。ただこの手の青春アニメをしかもオリジナルで作ろうにもなかなか難しいでしょう。ぱっと浮かぶのはP.A.WORKSの作品群でしょうか。そう考えると、初期のノイタミナが少女漫画アニメの場を提供したようにこのジャンルの作品を作る場を提供したということかもです。既存のアニメにこういう作品も成功すると示したことが、ノイタミナの抵抗だったのかもしれません。

 

 

 

 

『UN-GO』

 対外戦争、そしてその報復のテロによる大破壊後を描くポスト震災を色濃く反映しています。メディア王海勝麟六の間違った推理を探偵結城新十郎が解決し、しかし海勝の権力によって真相は改ざんされたまま報道される、それがこのアニメの基本構造です。新十郎は都合がよく、美しい偽りの真実に常に抗い、哀しく残酷で、それでも生の手触りのある本物の真実を求め続けていると思います。その姿は戦後日本の偽善的な態度に真っ向から戦いを挑み、力強く在ろうとした坂口安吾自身と重なるのではないでしょうか。震災後、新十郎のキャラ造形は変更され、迷いを抱えたキャラに変更されたそうです。どうにもならないものと戦い、戸惑い立ち止まりながら、それでも「ただ探し続けた」主人公を描いたからこそ、『UN-GO』はノイタミナに燦然と輝く、抗うアニメたり得たのです。

 

 

 

『ギルティクラウン』

 前半は葬儀社というテロ組織が活躍するスケール大きめ、設定多めのアニメといったところです。ニトロプラスが本格的にノイタミナに参入した作品でもあります。ロストクリスマスという大破壊の後の物語というのが『UN-GO』とかぶってしまった作品。特筆すべきは2クール目中盤でしょう。どうにもならない理不尽な世界に、冷徹な王であることで抗おうとした桜満集、絶対者の孤独と絶望はノイタミナでも随一の美しさを誇ると思います。静かに身を寄せ合う集といのりが印象的でした。ですが、ラストはちょっと尻すぼみというか、予定調和っぽい終わり方でしたね。最後まで抗い続けられなかったことが、この作品の今の評価の方向性を作ったのかもしれません。

 

 

 

『PSYCHO-PASS』

 僕はそうは思わないのですが、わりと賛否両論みたいです。『まどか☆マギカ』のヒットに叛逆(まあ敢えてこの字で)した展開にすればもっと話題になったのかも。そのネタはでも『まどか』新篇にとっておいたんだね。やってることの本質はまあ『まどか』とおんなじです。ただ、『まどか』が1クールで魔法少女をひっくり返すという制約の多い作品だったのに対し、こちらはのびのびとやっていて、より虚淵玄らしい作品のような気がします。虚淵玄のアニメは「枠組みへの不信感」というか「見えているルールを疑え」というものばかりです。今日世の中に氾濫する胡散臭いものに反乱したのかもしれません。個人的には王陵璃華子編が好きです。

 

 

 

『ピンポン』

 「あ、ノイタミナだ」と条件反射的に思うアニメ。なんででしょうね? 監督は『四畳半』と同じ湯浅政明さんで、変わらずよくあるアニメじゃやらないキャラ絵を全力でやってますね。これもノイタミナぐらいでしか通らないでしょうね。積極的に画面を大胆に分割して試合を表現したり、サブタイトルをAパートの最後にいれたりと意欲的な作品です。僕は原作未読なんですが、どうやらオリジナル要素がかなり多く、それでいて原作を壊していないそうで、構成によっぽど時間をかけたみたいですね。『TIGER&BUNNY』あたりが普遍的なヒーローなら、『ピンポン』はとても限定的なヒーローを描いた作品です。スマイルは既にヒーローに救われていて、対決の側面はペコVS風間にあった気もします。風間はヒーローという概念に抵抗していましたよね。

 

 

 

『龍ヶ嬢七々々の埋蔵金』

 誰もが「ノイタミナでラノベをやるのか」と思ったでしょう(『図書館戦争』あたりはグレーですが、モロなのはこれが初めてのはず)。謎解きっぽい要素が最初は強かった気もしますが、それほど従来のラノベアニメの枠から逸脱する作品ではなかった気がします。もしかするとノイタミナらしさに抗ったのかもしれませんね。ただのジャンル拡張かもですが。『冴えカノ』がこれに続いているので、たぶん計画的なんでしょう。ただまあ抗っているものに抗うってことは普通になるってことですよね。

 

 

『残響のテロル』

 そのものずばりテロの話です。抗うというテーマの最も直接的な表現です。ある意味ノイタミナが宿命的にたどり着いたテーマなのかもしれません。キャッチコピーも「この世界に、引き金をひけ。」で、とても象徴的ですよね。抗うということが前面に押し出された作品です。

 

1話

 冒頭の雪景色がなんとなく『ガリレイドンナ』を思い出しますね。やはりこういう展開をアバンからやる土壌がノイタミナにはあるんですね。1話はやはり一発目ということでインパクト重視な気がします。『コードギアス』的展開というか圧倒的知能戦を展開して、視聴者をあっと言わせる造りです。前半の学校の描写やいじめの描写も暗いトーンと相まって雰囲気あったんですが、これはテロパートとのコントラストで1話を盛り上げる意味しかなかったようで、2話以降まったく描かれていませんね。

 

 あとは1話まとめでも書きましたが、懐かしい気持ちになるアニメですね。蝉の声とか夏のプールとか。これは作品外の要素なのか、作品内にある要素なのか。

 

 

 

2話

 あ、これ毎回テロやるのかなと思わせる展開。1話が取り敢えず派手なことをする引きの役割なら、地道にこれからの地盤を固めていく2話って感じでしょうか。手堅いですね。冒頭の都庁の廃墟描写が印象的です。なんとなくエヴァのサキエル戦の後を思い出しました。それとやはり先行のノイタミナ諸作の廃墟描写を思い出さずにはいられません。とりわけ『UN-GO』の象徴的な廃墟あたりがダブって見えます。この回から神話をテロのモチーフに使用してます。学校描写とかが減った分の埋め合わせでしょうか。柴崎さんの冴えと再登場を匂わせており、やはりこれからの展開の道筋をつけていく回でしょうね。

 

補足:漫画でオイディプス読んでるのリアルですね/警視庁ほとんどスフィンクスの謎かけ知らないのはどうなんだ/今回も陽炎というか、画面をまっ白にする演出が夏の雰囲気を盛り上げてます/爆発の瓦礫が頭に降ってきた人絶対いると思うよね

 

 

 

3話

 3話はナインたちが警察を圧倒するのではなく、気づかせようという回ですね。警察側の駆け引きが今まで以上にクローズアップされています。そのため三島リサのパートがだいぶカットされてます。彼女のいじめの描写がプールに浮かんだ靴一つで表されているのは良かったですが、母親との関係をあれだけで描くのは少し雑な気もします。リサの家出から本格的に学校パートなくなりそうですね(なんか夏休みっぽいし)。警察側は、オイディプスの説明が少し長いような。でも説明しなきゃならないんですよね。

 

 この話で柴崎の過去が提示されてますね。内容自体はそれほど以外ではないですが、過去に「終わらない夏」という要素が入っています。これによって過去を引きずるナインとの類似性みたいなものが示されているのかもです。まさしく「残響」といったところでしょうか。全体を通して、夏を思わせる演出が変わらず続いていますね。

 

 

まとめ

 『残響のテロル』の面白いところは抗うという行為が先にあって、何に抗うのかという目標がまだ見えないところですね。二人が立ち向かうのは日本なのか、世界なのか、それとも特定の何かなのか? 抗うということ、それに純化した作品を十年を経たノイタミナが今見せてくれるのです。

 

今回の記事には友人のブログから大いに示唆を受けました。当時ノイタミナのノの字も知らなかった僕に『東のエデン』を貸してくれた友人に敬意と感謝を表して、リンクを貼らせてもらいます。非常に面白い考察なのでぜひ。

http://blog.livedoor.jp/hisagoplan/archives/1006219029.html